月だって人だってそういうとこはあるよ
「散歩がてら帰ろうか?」
絲山秋子.イッツ・オンリー・トーク
「いいね」
居候は犬のようにあたふたと喜びながらついてきた。
「鬱のときはさ、呑川んとこ歩くのよ」
うちのすぐ裏だ。汚い川だ。それでも少し涼しい風が吹く。秋の虫が闇を覆うように鳴いている。
「へっ、なんで?」
「真っ黒だから」
「川が?」
「うん」
祥一は少し黙ったがすぐにまた、
「優子ちゃん」と言った。
「月が映ってるよ、満月だよ」
「月も裏側は真っ暗だよ」
祥一は笑った。
「当たり前だよ、月だって人だってそういうとこはあるよ」
私は少しバカにしすぎていたかもしれない。
寝ぼけた蝉がジジッと鳴いた。祥一がすかさず叱った。
「夜なんだから寝ろよ、蝉」
ねこです。
おねいさん は こうこうせい の ころ ふらふら と よる さんぽ するのが すきだったみたい。
なに が あるわけでもなく なんとなく コンビニ まで いって かえってくるだけ。
でも よる に さんぽ するのって なんだか ぼうけんごころ くすぐるよね。
いつもと ちがう えきまえ
いつもと ちがう かんせんどうろ
いつもと ちがう まち
たからばこ は はっけん できなくても
なんだか けいけんち は ふえてる きがする
それを もとめて ひと は よる さんぽ するのかな?