ワンクリ」カテゴリーアーカイブ

ドキュメント

偶数ってなんか悔しくない?

「今年は四位だったらしい」
 良太は視線をグラウンドの三〇〇メートルトラックに向けたまま言った。自分が練習していた時はとても広く感じた市民グラウンドも、青海学院のグラウンドを見慣れてしまえば、それほどでもないように思える。
 四位というのは、今年の三崎中学陸上部の駅伝県大会の成績を指しているはずだ。グラウンドの半周を囲むように設置されたスタンド席の片隅で、僕たちが眺めているのは、それに出場した後輩たちの姿なのだから。
 去年の成績は二位。一八秒差で全国大会を逃した悔しさを、僕は何度思い出しては拳を握り、歯を食いしばっただろう。来年こそはと奮起した後輩たちは、今年の成績をどう捉えているのか。顧問の村岡先生は……、見慣れたジャージ姿で、「苦しかったら空見て走れ」と聞き慣れた掛け声を上げている。
「そっか……。偶数ってなんか悔しくない?」
 他人がどんなふうに捉えているかなんてわからない。思いついたことを口にした。二位には、一位に届かなかった悔しさがある。三位だと、賞状やメダルに手が届いた嬉しさがある。四位には、そこに届かなかった悔しさがある、ような気がする。
「わかる、それ」

湊かなえ.ドキュメント(角川文庫)

ねこです。

おねいさんが こどものころは うんどうかいを あきに やっていましたが
さいきんは 5がつに やることも おおいそう。
たしかに 9がつ 10がつと くらべたら まだ かいさいしやすい きこうかも。

しかも きばせんや ぼうたおしや たまいれもやらずに
ごぜんちゅうで おわりにする がっこうも あるとか ないとか。
じだいの うつりかわりを かんじます。
ダンスと ときょうそうだけの うんどうかい
ちょっと さみしいです。

おねいさんの しょうがっこうでは ときょうそうは 6にんで やってました。
1いは あか
2いは あお
3いは みどり
というふうに 3いまでは じゅんいによって リボンを かたに つけてもらえる システム。
おねいさんはというと はやくもなく おそくもなく あんていの 4い。
つまり リボン もらえない。

なので ぐうすうは くやしいを なんども けいけんしている ベテラン。
「ぐうすうは くやしい」の でんどうしともなれる いつざいです。

とはいえ いまとなっては きにもしていないし
なんなら いまのいままで わすれていたくらいなので
「ぐうすうは くやしい」のでんどうしを なのるのは
ちょっと おこがましいので やっぱなしです。

永遠についての証明

でも死ぬまでに解ければいいんだから、挫折じゃない。

 突風がやむと、唐突に熊沢は尋ねた。
「瞭司って、挫折したことあるか」
「挫折って?」
「いやたとえば、どうしても解けない問題とか、ぶち当たったことないの」
「あるよ。いくらでもある。でも死ぬまでに解ければいいんだから、挫折じゃない。今解けなくても、死ぬまでに何回でもチャレンジすればいい。それに僕が解けなくても、他の誰かが解いてもいい。だからそもそも、問題を解くことに挫折はない」
 顔の高さに蚊柱が浮いていた。熊沢は不愉快そうにそれを振り払う。図に乗っていたつもりはないが、瞭司の答えはプライドを刺激したようだった。
「テストで解けなかった問題とかないのか」
「テストなら、ないよ」
「本当に、たった一問もない?」
「ない」間髪を容れず、瞭司は答えた。
「僕、テストって嫌いだけどね。テストの問題って答えがあるでしょ。答えがあるってことは、すでに誰かが解いてるってことだよね。他の誰かが解決済みの問題なのに僕が解く必要あるのかなっていつも思う」

岩井圭也.永遠についての証明(角川文庫)

ねこです。

ゴールデンウィークが あけて きおんが ぐんぐん あがり
まだ 5がつと いうのに れんじつ なつび。
このままだと 8がつには 50どを こえ
アスファルト にくきゅうを きりさきながら
くらやみ はしりぬけることに なりかねない。

よのなかにある ねこを モチーフとした どらやきや
いまがわやき(おおばんやきとか かいてんやきとか おなじみのものを そうぞして!)に
なづけられている「にゃんこやき」なる たべものには
たいてい ねこの にくきゅうの やきいんが ほどこされており
「わるいことすると にゃんこやきの やきいんとうばんに されるからね」と
おねいさんに ずっと いわれてきた こどもじだいでした。

きょううふに おののきながら すごしていたあのころが
まさか げんじつに なるかのごとく にくきゅうを ねっする アスファルト。
どうにかならないものですか。

そんなわけで あつさには めっぽう よわい ねこですが
どうぶつえんでは そろそろ こおりに とじこめられた フルーツなど
ふるまう きせつ。
みているぶんには すずしげで よいのですが
はやく たべたくて もどかしいきもちにも なります。
おなかを すかしているなか とけるのを まつのも しんどいです。
「しぬまでに とければいいんだから」と
おねいさんは わらっていますが いやいや
しぬまぎわに とけても こまります。

ちゅーるを こおりづけにして だしてきたら
おねいさんの ひたいに にくきゅうの やきいん つけることを けんとうします。

スターティング・オーヴァー

特に差し迫った用がないとき、どれくらいの速度で歩くかっていうのは、幸せの指標の一つだと思うよ。ほんとにね。

 薄暗い街の中を、ヒイラギはすいすい歩いていく。歩くのが速いんだ。一人でいることに慣れている人間っていうのは、誰かに合わせて歩くことを忘れる上、いつでも「今ここ」に不満を持っていて、「ここにいたくない」と思っているもんだから、歩くのがとても速い
──っていうのが僕の持論さ。
 逆にいえば、「今ここ」に満足している幸福な人間っていうのは、ゆっくり歩くんだ。トキワとツグミなんか、まさにそれだったな。彼らは小突きあったり寄りかかりあったり見つめあったりして、とにかくおそろしくゆっくり歩くから、尾行するのも大変なんだよ。二人でいるだけですでに幸せなもんだから、急いでどこかにいこうとは思わないんだろうな。
 特に差し迫った用がないとき、どれくらいの速度で歩くかっていうのは、幸せの指標の一つだと思うよ。ほんとにね。

三秋縋.スターティング・オーヴァー(メディアワークス文庫)

ねこです。

ねこは さんぽのとき わりと テンポよく あるきます。
けっして げんじょうに まんぞく していないのではなく
いちにち いちにちを めいっぱい たのしむためです。

でも ねこの あるく スピードじゃ いけるはんい ちょっぴりです。
5さいじくらいの かんかく。
ほんとは となりまちまで ずんずん あるいていきたいです。

そのむかし おねいさんは じてんしゃで となりまちまで よく いってました。
あるいては いけないきょりも じてんしゃだと すいすいです。
うらやましい!
ねこも じてんしゃ こげるように なりたいけど たぶん あしが とどかない。
キックボードだったら のれるかな?
いつか キックボードで となりまちまでいく!
あらたな もくひょう できました。