永遠についての証明

でも死ぬまでに解ければいいんだから、挫折じゃない。

 突風がやむと、唐突に熊沢は尋ねた。
「瞭司って、挫折したことあるか」
「挫折って?」
「いやたとえば、どうしても解けない問題とか、ぶち当たったことないの」
「あるよ。いくらでもある。でも死ぬまでに解ければいいんだから、挫折じゃない。今解けなくても、死ぬまでに何回でもチャレンジすればいい。それに僕が解けなくても、他の誰かが解いてもいい。だからそもそも、問題を解くことに挫折はない」
 顔の高さに蚊柱が浮いていた。熊沢は不愉快そうにそれを振り払う。図に乗っていたつもりはないが、瞭司の答えはプライドを刺激したようだった。
「テストで解けなかった問題とかないのか」
「テストなら、ないよ」
「本当に、たった一問もない?」
「ない」間髪を容れず、瞭司は答えた。
「僕、テストって嫌いだけどね。テストの問題って答えがあるでしょ。答えがあるってことは、すでに誰かが解いてるってことだよね。他の誰かが解決済みの問題なのに僕が解く必要あるのかなっていつも思う」

岩井圭也.永遠についての証明(角川文庫)

ねこです。

ゴールデンウィークが あけて きおんが ぐんぐん あがり
まだ 5がつと いうのに れんじつ なつび。
このままだと 8がつには 50どを こえ
アスファルト にくきゅうを きりさきながら
くらやみ はしりぬけることに なりかねない。

よのなかにある ねこを モチーフとした どらやきや
いまがわやき(おおばんやきとか かいてんやきとか おなじみのものを そうぞして!)に
なづけられている「にゃんこやき」なる たべものには
たいてい ねこの にくきゅうの やきいんが ほどこされており
「わるいことすると にゃんこやきの やきいんとうばんに されるからね」と
おねいさんに ずっと いわれてきた こどもじだいでした。

きょううふに おののきながら すごしていたあのころが
まさか げんじつに なるかのごとく にくきゅうを ねっする アスファルト。
どうにかならないものですか。

そんなわけで あつさには めっぽう よわい ねこですが
どうぶつえんでは そろそろ こおりに とじこめられた フルーツなど
ふるまう きせつ。
みているぶんには すずしげで よいのですが
はやく たべたくて もどかしいきもちにも なります。
おなかを すかしているなか とけるのを まつのも しんどいです。
「しぬまでに とければいいんだから」と
おねいさんは わらっていますが いやいや
しぬまぎわに とけても こまります。

ちゅーるを こおりづけにして だしてきたら
おねいさんの ひたいに にくきゅうの やきいん つけることを けんとうします。

スターティング・オーヴァー

特に差し迫った用がないとき、どれくらいの速度で歩くかっていうのは、幸せの指標の一つだと思うよ。ほんとにね。

 薄暗い街の中を、ヒイラギはすいすい歩いていく。歩くのが速いんだ。一人でいることに慣れている人間っていうのは、誰かに合わせて歩くことを忘れる上、いつでも「今ここ」に不満を持っていて、「ここにいたくない」と思っているもんだから、歩くのがとても速い
──っていうのが僕の持論さ。
 逆にいえば、「今ここ」に満足している幸福な人間っていうのは、ゆっくり歩くんだ。トキワとツグミなんか、まさにそれだったな。彼らは小突きあったり寄りかかりあったり見つめあったりして、とにかくおそろしくゆっくり歩くから、尾行するのも大変なんだよ。二人でいるだけですでに幸せなもんだから、急いでどこかにいこうとは思わないんだろうな。
 特に差し迫った用がないとき、どれくらいの速度で歩くかっていうのは、幸せの指標の一つだと思うよ。ほんとにね。

三秋縋.スターティング・オーヴァー(メディアワークス文庫)

ねこです。

ねこは さんぽのとき わりと テンポよく あるきます。
けっして げんじょうに まんぞく していないのではなく
いちにち いちにちを めいっぱい たのしむためです。

でも ねこの あるく スピードじゃ いけるはんい ちょっぴりです。
5さいじくらいの かんかく。
ほんとは となりまちまで ずんずん あるいていきたいです。

そのむかし おねいさんは じてんしゃで となりまちまで よく いってました。
あるいては いけないきょりも じてんしゃだと すいすいです。
うらやましい!
ねこも じてんしゃ こげるように なりたいけど たぶん あしが とどかない。
キックボードだったら のれるかな?
いつか キックボードで となりまちまでいく!
あらたな もくひょう できました。

三日間の幸福

あなたが左肩を濡らしていることには、とっても温かい意味がある、ってことです。

 外ではいつの間にか、夏特有の急な大雨が降っていた。濡れるのを覚悟で外に出ようとすると、金髪の店員がビニール傘を貸してくれた。
「あなたが何をしようとしているのかはよく分かんないですけど、何かを成し遂げたいなら、まず健康は欠かせませんからね」
 俺は礼をいい、渡された傘を差し、ミヤギと並んで帰った。小さい傘だったから、二人とも肩がずぶ濡れになった。すれ違う人々が俺を奇異の目で見ていた。傍目には、見当違いな位置に傘を差している馬鹿に映ったに違いない。
「こういうの、好きだなあ」とミヤギが笑った。
「どういうのが好きなんだ?」と俺は訊いた。
「んーと、つまりですね。周りには滑稽に見えるかもしれないけれど、あなたが左肩を濡らしていることには、とっても温かい意味がある、ってことです。そういうのが好きなんです」
「そうか」と俺はいった。少しだけ顔が熱くなった。

三秋 縋. 三日間の幸福 (メディアワークス文庫)

ねこです。

ねこは あめのひは きほんてきに いえに いますが
ひとは かさを さして おでかけすることも あります。

あさ かさを もたずに とうこうして
かえりぎわ あめが ふりだしとき しょうこうぐちで きになってる ひとに
「いっしょに かえらない?」なんて いわれた ひには フラグせいりつ
ってな もんらしいです。
ねこには よく わかんないですけど。

そういえば 4ひきの トラが ぐるぐるまわって バターになる はなし。
あの トラの 1ひきが しっぽで きように かさを さしてた きがします。
ねこも れんしゅうして させるように しておきたいです。
かさが なくて こまってる ひとと いっしょに かえれるように じゅんび はたいせつ。
でも よくかんがえたら ねこの せより ひくい どうぶつしか かさに いれてあげられない。
べつの ほうほう かんがえます。