月別アーカイブ: 2024年9月

愚者のエンドロール

誰でも自分を自覚するべきだ。でないと。……見ている側が馬鹿馬鹿しい

「では一つ、話をしよう。堅苦しく考えなくてもいい。座興と思って聞いて。
 とあるスポーツクラブで、補欠がいた。補欠はレギュラーになろうと努力した。きわめて激しい努力だ。なぜそれに耐えられたのか。彼女はまずそのスポーツを愛していたし、またささやかでも名を成したいという野望もあったからよ。
 しかし、数年を経ても、その補欠がレギュラーになることはなかった。そのクラブには有能な人材が、その補欠よりもずっと有能な人材が揃っていたから。単純にね。
 その中でも極めて有能な、天性の才のある人間がいた。彼女は他のメンバーとは全く一線を画する存在だった。無論補欠の技量とは天と地の開きがあった。彼女はある大会で、非常に優れた活躍をした。大会全体を通じてのMVPにも選ばれた。そこでインタビュアーが彼女に訊いた。大活躍でしたね、秘訣は何ですか、と。彼女は答えて言った。
 ただ運がよかっただけです。
 この答えは補欠にはあまりに辛辣に響いたと思うけど、どう?」
 入須は再び俺に正対する。俺は喉の渇きを覚えたが、あいにく湯呑にもう茶は残っていない。わずかに残るお冷に手を伸ばす。
 その時、入須はぽつりと言葉を漏らした。いつも纏った女帝の衣を、つい脱ぎ落としたように。それは俺に言ったのではないのだろうが……。その言葉は俺にはこう聞こえた。
「誰でも自分を自覚するべきだ。でないと。……見ている側が馬鹿馬鹿しい」
 喉に流したお冷が、ひやりと俺を冷やした。

米澤穂信.愚者のエンドロール「古典部」シリーズ(角川文庫)

ねこです。

オータニさんみたいな ひとは ちがうかもですが
ふつーの ひとは じかくするの なかなか むずかしい。
おねーさんは わりと ふつーの ひととして いきてきたので
じかく できるようなことが まったく ありません。

でも わりと うんよく いきています。
なので「うんが よかっただけです」って じゅうぶん リアル。
あるいみ ノリ と うん だけで いきてる げんじつ。

なんとなく ドラクエやってても ラリホーとか マヌーサとか
かかりにくい きが します。
おねいさんの うんのよさも ゲームに はんえいするレベル。

うんのよさを じかくして いきていく おねいさんを
きょうも おうえんしたいと おもいます。

氷菓

ジョークは即興に限る、禍根を残せば噓になる

「お前、帰ったんじゃなかったのか」
「そのつもりだったんだけど、下からこの部屋を見上げたらホータローが女の子といるのが見えたからさ。さすがの僕も、出歯亀だけは未経験だからね」
 俺はその言い草を、里志から視線を外すことで無視する。これはこいつ流のジョークなのだ。だが、あまりに飄々と言うので、里志の物言いに慣れてない人間は、よくこいつの言うことを本気にしてしまう。
 どうやら千反田もその口のようだ。
「え、え、わたし……」
 さっきまでの静かな態度は消えうせて、面白いくらいにうろたえている。見掛けによらずこの娘は感情表現がストレートらしく、おろおろとなにかを言おうとしては詰まる様は、わたしは現在うろたえていますよと全身で訴えているようだ。見ている分には楽しいが、放っておくわけにもいくまい。
 幸い、里志のジョークを暴くのは簡単だ。一言訊けばいい。
「本気で言ってるのか?」
「まさか、ジョークだよ」
 ほっと千反田から緊張が抜けるのがわかった。里志のモットーは「ジョークは即興に限る、禍根を残せば噓になる」なのだ。

米澤穂信.氷菓「古典部」シリーズ(角川文庫)

ねこです。

ジョークが ジョークとして つたわらないと めんどくさいです。
こいきな ジョークを いえる ひとは すごいと おもいます。
にほんごでは じょーだん なんて いったりもしますが
えいごでも にほんごでも 「じょー」ってはいってる じじつに きづいてしまいました。
ジョーさんとか ジョージマさんとか かんけいしているのかも。

そういえば そのむかし マイケル・ジョーダンさんという バスケットボールのかみさまみたいな ひとが
きゅうに バスケ いんたいして やきゅうに ちょうせんする じょーだんみたいな はなしが ありました。
1ねんかん やきゅうに うちこみ バスケかい そく ふっき。
あれは ジョーダンなりの じょーだんだったのでは?みたいな ダジャレが
にほんじゅうで 32,292かいくらい いわれてました。
ほんとのところは おとうさんとの やくそくだったらしいです。

ジョーダンさん さいきん なにしてるかな?
って おねいさんの エアジョーダンみながら おもいを はせることにします。



レゾンデートル

俺はな、人生の意味はあの世に行く瞬間に決まると思うんだよ

『死』とは何なのだろう?数ヵ月避け続けてきた問いを正面から見据える。
 人はいつか死ぬ。雄貴は研修医時代に会った先輩医師を思い出していた。五十代前半のその医師は、膵臓癌を患っていた。化学治療を受けていたが、余命はわずかだと自覚していた。その医師が入院したとき、雄貴は研修医として指導医とともに担当になった。
 ある日、その医師は雄貴に言った。「なあ、人生の意味ってなんだと思う?」と。雄貴は言葉に詰まった。末期癌患者に人生観を語れるほど、まだ医師としての経験を積んでいなかった。強張った顔を見せる雄貴に、その医師は笑いかけ「そんな深刻な顔すんなよ」と背中をたたきながら言った。
「俺はな、人生の意味はあの世に行く瞬間に決まると思うんだよ」
 雄貴は言っている意味が分からず首をひねった。
「死ぬとき人間はな、いろんな顔をするんだよ。滅茶苦茶に苦しそうな顔するやつもいれば、泣いたような顔になるやつもいる、あと驚いたような顔もな。けどな、時々、笑顔で逝くやつがいるんだ。死ぬ瞬間で意識も失って、体は悲鳴上げてるのにだぜ。そういうやつらはな、みんながみんな、人生に満足してるんだよ。やるべきことはやった。思い残すことはないってな。そうやって周りの人に看取られていくんだ」

知念実希人.レゾンデートル(実業之日本社文庫)

ねこです。

ねこは まだ ねこせいに まんぞくしてません。
まだ やるべきことが のこってる きが します。
でも それが なんなのか よくわかんない。

もっと せみを つかまえることかも しれないし
キャベツと レタスを みわけることかも しれないし
M-1グランプリで ゆうしょうすることかも しれない。

しぬまでにやりたいことリストみたいなの Xとかで よくみますが
ああいうの つくったほうがいいのかな?
やりたいこと つぎから つぎへと ふえていって
けっきょく ぜんぶ やりきれず しんでしまう みらいが みえます。

リスト つくったら まいにち いそがしくなってしまいそうで
ねこの しんじょうと あわない きが するので
あんまり きにせず いまを いきることにします。