絲山秋子」タグアーカイブ

イッツ・オンリー・トーク

月だって人だってそういうとこはあるよ

「散歩がてら帰ろうか?」
「いいね」
 居候は犬のようにあたふたと喜びながらついてきた。
「鬱のときはさ、呑川んとこ歩くのよ」
 うちのすぐ裏だ。汚い川だ。それでも少し涼しい風が吹く。秋の虫が闇を覆うように鳴いている。
「へっ、なんで?」
「真っ黒だから」
「川が?」
「うん」
 祥一は少し黙ったがすぐにまた、
「優子ちゃん」と言った。
「月が映ってるよ、満月だよ」
「月も裏側は真っ暗だよ」
 祥一は笑った。
「当たり前だよ、月だって人だってそういうとこはあるよ」
 私は少しバカにしすぎていたかもしれない。
 寝ぼけた蝉がジジッと鳴いた。祥一がすかさず叱った。
「夜なんだから寝ろよ、蝉」

絲山秋子.イッツ・オンリー・トーク

ねこです。
おねいさん は こうこうせい の ころ ふらふら と よる さんぽ するのが すきだったみたい。
なに が あるわけでもなく なんとなく コンビニ まで いって かえってくるだけ。
でも よる に さんぽ するのって なんだか ぼうけんごころ くすぐるよね。
いつもと ちがう えきまえ
いつもと ちがう かんせんどうろ
いつもと ちがう まち
たからばこ は はっけん できなくても
なんだか けいけんち は ふえてる きがする
それを もとめて ひと は よる さんぽ するのかな?

袋小路の男

なのにどうして目に見えるものを記録したくなるのかな

 リニア彗星とニート彗星が地球に接近していた。二つの彗星が同時に観測できるチャンスは滅多にない。彗星の見え方は近づいてからでないと判らないことが多いが、天文ファンにとってはそれも醍醐味の一つだった。双眼鏡と小型の望遠鏡望遠鏡で観測した二つの彗星は期待したほどの大きさではなかったが、まあこんなものかな、と二人は笑った。
 彼らは天文台の講習を何度か受けて望遠鏡操作資格を取得していたので、予約すれば深夜に望遠鏡を借りることが出来た。軸を北極星に向けた大型の望遠鏡は、リモコンで操作すると医療機器のような音をたてて星を追った。尾島はCCDカメラで時間をかけて渦巻き銀河の写真を撮るのを好んだ。M51通称子持ち銀河が、今回の彼らのお目当てだった。
「不思議だよな」
 暗闇のすぐ隣から尾島が言った。その声の調子からすると、彼の顔にはそこそこの写真が撮れそうな手応えを感じたときの誇らしげな表情が浮かんでいるに違いなかった。
「宇宙には普通の物質よりも、ダークマターとかダークエネルギーの方がずっと多い多いじゃないか、なのにどうして目に見えるものを記録したくなるのかな」
 全宇宙の密度のうち96%は目に見えないダークマター、ダークエネルギーが占めていると言われている。星はたった1%にすぎない。
「見たことを忘れたくないからだろ」と哲は言った。
「それじゃ答になってないぜ」
「社会にだって目に見えないことの方が多いよ」

絲山秋子.袋小路の男(講談社文庫)

ねこです。

ダークマターって なに?
ねこ は マタタビ の いっしゅだと おもっているよ。
なんかねー ひごうほう な マタタビ。
うちゅう の だいぶぶん は マタタビ。
うちゅう を ただよう マタタビ の におい。
にんげん は マタタビ に きょうみ ないから みようとも しない。

ねこ なら どこから マタタビ の におい が するんだろうって め を こらすよ!
もしかしたら ほんき で みようと すれば みえてくるものも あるのかな?
もしみえるなら ねこ は おねいさん の あたま の なか を みてみたいです。