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しあわせの香り 純喫茶トルンカ

空って青いんだなあ……。

 おかしな話だけど、倒れたときに自分の中でずっと燻っていたものが、憑き物が落ちてしまったみたい。心を厚く覆っていた皮が脱皮するようにべろべろっと一枚はがれて、新鮮な自分に生まれ変わった気分。
 とうに限界を迎えていた体が、そうすることで私に教えてくれようとしてたんじゃないか。そんな気さえした。
 宇津井が以前、ふとした会話の中で口にしていたことを思い出す。
「体ってのは、素直なんだよ。悲鳴を上げて、俺たちに必死に教えようとしてくれてるんだ。それに気づかない振りして騙し騙し生活してると、あとで痛いしっぺ返しがくる」
 その通りだ、と思う。
 当たり前だけど、心と体はきっちり繫がっていて、どちらかをおろそかにしているとあとで必ず反動がくる。その当たり前さを忘れて生きていて、あとで後悔するのはほかでもない、自分自身だ。
 皮肉なことに、私はそれでやっと自分とゆっくり向き合う機会を得た。
 空って青いんだなあ……。
 寝転んだまま、ガラス戸の向こうに広がる空を、長いことぼんやり眺めた。
 お昼すぎの空は、淡い水色のグラデーションをつくり、綿菓子のような雲がゆっくり形を変えながら流れていく。雲間から太陽が顔を出したり引っ込めたりするたび、庭に光が満ちたり薄暗くなったりする。いくら見ていても、見飽きることがない。

八木沢里志.しあわせの香り〈新装版〉純喫茶トルンカ<新装版>(徳間文庫)

ねこです。

それでも そら は あおいんです。
むかし の えらい ひと が いってた き が するけど なんか ちがうかも。

おねいさん は こども の ころ まだ ぞうせいちゅう の こうえん に
しのびこんだ こと が あります。
となり の しせつ の へい から のりこえて ちょちょいのちょい。

まだ ゆうぐ が せっち されて おらず
いちめん すなち で こうじようフェンス に かこわれた くうかん。
その すなち に あおむけ に ねころび みあげた あおぞら の あおいこと。
ほんとう に すいこまれそう な かんかく に なったんだって。
いや じっさい ちょっと すいこまれてた せつ あり。

おとな に なると そら を みあげる こと も なく
まいにち が すぎさって いく けど
ときどき ねころんで そら みあげる のも いいかも。
そら に すいこまれる かんかく ねこ も あじわって みたいものです。