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君の顔では泣けない

でもきっとその時には既に予感があったように思う。高校という枠組みから外に出てしまえば、もう今まで通りにはいかないのだという予感が。

 決して良い高校生活とは言えなかった。思い描いていたものとはもちろん全く違っていたし、瑞々しさのない乾燥した日常で青春を浪費してしまった。楽しげに笑う同級生達の横で、楽しくなくても満たされていなくてもいいから、ただ静かに今が終わればいいと、眠くもないのに机に突っ伏していた。
 ラーメンを勢いよくすする水村と田崎をぼんやりと眺める。そんな日々の中でも、この二人と一緒にいるときだけは楽しかった。事情を共有する水村はさておき、田崎も俺に親しく接してくれた。かつて一緒にふざけあった時と何ら変わらない屈託のない笑顔。いろんなものを次々に手放していってしまうような日々の中で、田崎は最後まで俺の友人としていてくれた。
「二人のお陰で、楽しかったなあ」
 思わず呟いていた。なんだよ急に、と水村が笑う。
「いやなんか急にふと思っちゃって。二人は私の人生の中の超重要人物だよ」
「よく言うよ。二人とも俺を置いて東京行っちゃうくせに」
 餃子を頰張った口で田崎が拗ねてみせる。田崎は実家の酒屋を継ぐべく、卒業してすぐに家業に専念するのだと言っていた。
「まあそうすねるなって。盆正月には帰ってくるからさ」
「うん。そのときにはまた三人で遊ぼう」
 水村と俺がそう励ますと、にかっと笑って「都会の遊び方教えろよな」とおどける。
 でもきっとその時には既に予感があったように思う。高校という枠組みから外に出てしまえば、もう今まで通りにはいかないのだという予感が。誰も口には出さないだけで、おそらくみんなそう思っていただろう。

君嶋彼方.君の顔では泣けない(角川文庫)

ねこです。

こうこうって しょうがくせいの えんちょうにある ちゅうがくせいと ちがって
こうどうはんいも できることも こうゆうはんいも ぐっと ひろがって
でも まだ じもといしきは あったりして
たまには ちゅうがくじだいの ともだちとも あそぶことも あります。

でも こうこうを そつぎょうすると みんな しんろ バラバラで
じもとの ともだちなんかも じっか でたり
いろいろ せいかつが かわってきます。

かんきょうが かわりすぎて ズレが でてくるなんて
こうこうじだいには ピンと こないのも しかたないけど
かくじつに やってきます。

おざわけんじさんの うたで
「ほんとうは わかってる にどと もどらない うつくしいひに いると
そして しずかに こころは はなれていくと」
って ありましたが、まさに それです。

そつぎょうが ちかづくにつれ「あ、これって もう にどと ないんだ」
って みょうに かんしょうてきに なったり ならなかったり。

それくらい こうこうじだいって とくべつなんだよ
って おねいさんは ねこに いいきかせますが
ねこの せかいに こうこうじだいは ないので
しょーじき よくわかりませんのだ。