ワンクリ」カテゴリーアーカイブ

MOMENT

今の十秒間、君は生きていた。けれど、いつからか、その十秒間、君は死に近づいたと感じるようになる。

「死ぬって」と僕は言った。「どんな感じでしょうね」
 五十嵐さんが僕を振り返り、微笑んだ。
「目をつぶってごらん」
「はい?」
「目」
 五十嵐さんは腕を伸ばし、手を横にして僕の両目を覆った。僕は目をつぶった。何かするのかとも思ったが、五十嵐さんの手は僕の目を覆ったきり動かなかった。どこかで人の歩く音が聞こえた。誰かが喋る声も聞こえた。アナウンスで麻酔科医が呼び出されていた。ストレッチャーを押す音だろうか。金属が擦れ合う音も聞こえた。やがて五十嵐さんの手が離れ、僕は目を開けた。
「どう?」と五十嵐さんは言った。
「どうって言われても」
「今の十秒間、君は生きていた。けれど、いつからか、その十秒間、君は死に近づいたと感じるようになる。そうなったら、もう誰にも死は止められない。君を搦め捕り、その世界に引きずり込むまでね」

本多孝好.MOMENT(集英社文庫)

ねこです。

いきる と いうことは つねに ちゃくじつに いっぽいっぽ シ に ちかづいて いるんだそうです。
こども の ころ シ なんて ジサツ か こうつうじこにでも あわないかぎり そうぞう つかなかった おねいさん も
さいきん は びょうき とか たいちょう とか どろどろち とか
すごく かんがえてます。
とし を とれば とるほど だれか が しぬので
30さいにして ちゅうがくじだい の おなじ がくねん ぜんいん が
そろわないってことも あるかも しれません。

ネコ の せかい は わりと アバウトなので しんでも そのまま 100まんかい いきちゃう ネコ なんてのも います。
いちいち かぞえてられるかって かんじ ですけど
ネコどうし よーく みると あたま の うえ に すうじ が くるくる と まわってたりします。
ちなみに ねこ の あたま の うえには 3 という すうじ が くるくる まわっているみたい。

このまえ おねいさん に「ぜんせのこと おぼえてないの?」って きかれました。

「いえ しらないの。たぶん ねこ は 3ひきめだと おもうから」

って こたえたら がっかり されました。
ほんとのことなのに!

エバーグリーン

私は死ぬまで歩いていける。飛べなくたって、シン君の背中を追って、どこまでだって行けるんだ。

「マジ、十年後な。十年後の今日、三月十四日、ここっ」
 ここ、とシン君が指したのは地面だ。私たちの前に後ろに、何も目印のないあぜ道が広がっている。電柱と、融けかけた雪の田んぼしか見えないこの場所は、約束に向いていないようで向いている。この道は建物みたいになくなったりしないし、何より、どこに立ったって相手を見つけられる。目印なんか要らないのだ。
 私は思わず「ほんと?」と訊き返してしまう。
「ほんとにほんと?本気にするよ。私だけここにぽつんと居て待ちぼうけとかにならない?」
 こんなに食いついていいんだろうか、と思ったけれど、シン君は「だったら、わかりやすく十時にしよう」と条件を付け足してから「ほんと」と言い切った。ぎゅっと口の端を結んで上げる。
「じゃ、十年後」
 そう言ってシン君はピースサインを突き出した。
「うん、十年後」
 ピースサインを返した私は、何故だかにいっと笑っていた。
 自転車のチェーンが鳴る音が小さく聞こえた。シン君がペダルを踏み込む。雪どけの水が染み込んでがたがたになった道を、不安定に走り出す。だんだん遠くなる。
 私は右手のチョキを下ろすと、その場に留まってシン君の背中を見ていた。
 ――シン君が振り返らなかったら、私たちは本当にここで会える。
 心の中で賭けをした。私が見ている間、シン君はついに振り返らなかった。代わりに途中から歌が聞こえてきた。
 風が吹いて、涙の跡をくすぐる。くすぐりながら、乾かしていく。
 あぜ道に沿うように、黄色いカタマリがぽつぽつと見えている。雪が融けたら顔を出す、フキノトウの花だった。
 私は死ぬまで歩いていける。飛べなくたって、シン君の背中を追って、どこまでだって行けるんだ。

豊島ミホ.エバーグリーン双葉文庫

ねこです。

20だい に はいると あっというまに とき は すぎるもので
きづけば 10ねんまえ は ちゅうがくせい でも こうこうせい でもないという ミソジてまえという じき が だれしも に くるそうです。
じだい じだい は おんがく を きく と わりと おもいだせる みたいです。
ちゅうがく こうこうじだい の ともだち と あって なんとなく はなし が つづかないときは
カラオケ に いくと よいよ。
とうじ の うた を うたっても わりと へーきだし
うたいながら あれや これや おもいだしてくるので おすすめ てき。

あのころ の ゆめ は まぼろし に かわっても
おもいで までは いろあせませんのだ。

パラレル

携帯電話もノートパソコンも蝶番で折り畳めるというのは利便ではなく、気持ちと動作が連動することを見越してのことではないかと思う。

 誰だろう。結婚式の女か。名刺を渡した覚えはないが。二度読み返して、あの店で働いていた女だと気づき、座り直す。あの店には女店員が二人いた。すごくいい女と、遅刻してきたまあまあの女と。どちらだろうか。いい方の女をかなり気に入っていたのに、顔がよく思い出せない。
 読むうちに、遅刻してきた方だと分かり少し落胆する。店のママにいわれての、誘客のメールかもしれないと思って読むが、かなりゲームに詳しいようである。
 メールのおしまいの方は、もう二年間も新作を発表していないことを心配し、待望する主旨だった。そんな熱心なゲーマー風にもみえなかったのに。時代は変わった。
(チャーンス!)サオリがことあるごとに叫ぶ台詞が脳裏をよぎる。すぐに返事を出すのはがっついているのが見透かされそうで、少し置くことにする。
 もう一通はK社の元後輩の植松から。「また一緒に仕事しましょうよ」と定期的にメールを寄こし、声をかけてくれる。自分が誰かになにかを待望されているということに戸惑いを感じながら、パソコンを閉じる。携帯電話もノートパソコンも蝶番で折り畳めるというのは利便ではなく、気持ちと動作が連動することを見越してのことではないかと思う。

長嶋有.パラレル(文春文庫)

ねこです。

けーたいでんわ も ノートパソコン も おりたたむ と なぜだか ふぅっと いき を はいてしまいます。
おりたたむ その ちょくぜん まで しんけん な まなざし を むけているからなのかも。
そういえば ファンデーションケース も そうです。

ほん も ぱたん と とじるから よみおえたかん が あるので あって
あれ が もし まきもの だったら よみとちゅうでも よみおえても めんどくさいです。
なるほど ほん と いうのは あれで なかなか かんがえられているのかも しれません。