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傲慢と善良

何かがあった時に、まだ若いんだからって、自分より年上の人たちから言われるの、私も嫌だった。

「西澤さんは?」
「私も東京です」
 こういう時、今の住所はもう東京なのに、それでも群馬だと答えそうになる。もう三年以上になるのに、東京に住んでいる、という感覚に、まだ全然なれない。
「あら、そうなの。同じだね」
 早苗が穏やかな口調で微笑んで言うが、それきり、東京のどこなのか、というところまではお互いに聞かない。聞けない雰囲気がある。
 では、彼女たち親子は被災してここにきた、というわけではないのだ。本当は自分たちについてはあまり聞かれたくなかったのではないか──と思ったら、自分の事情を、彼女にちゃんと明かさなければいけないような気持ちになった。自分だけ聞いたのでは、フェアじゃないような気がしたのだ。
「実は、結婚がダメになっちゃって」
 本当は、まだダメになったかどうかわからないけれど、あえてそう言うと、自分の言葉に、自分で少し、傷ついた。
 告げた言葉に、早苗が「まあ」と小さく息を吞んだ。
「だから、東京に、あまりいたくなかったんです」
「そうだったの。西澤さん、今、いくつ?」
「三十五です」
「まだ若いじゃない。大丈夫よ──って言いたいけど、そんなふうに言われるのも、今はきっと嫌よね」
 早苗の顔を見つめると、彼女が「私も、嫌だったから」と肩を竦める。
「何かがあった時に、まだ若いんだからって、自分より年上の人たちから言われるの、私も嫌だった。そんなこと言う人にだけはならないようにしようって思ってたのに言っちゃった。ごめんね」
「早苗さんはおいくつなんですか?」

辻村深月.傲慢と善良(朝日文庫)

ねこです。

だいたい わかいうち は「まだ わかいんだから」って いっておけば いい と
としうえ の ひとたち は おもいがち。

こいびと と わかれて おちこんでる ときも
ゆめ やぶれて しょうらい まよってる ときも
おおざらりょうり が ちょいちょい のこってる ときも
「まだ わかいんだから」って いわれます。

これって なんさい まで いわれるのかな?
30さい に なっても 50さい の ひと に いわれそうだし
40さい に なっても 60さい の ひと に いわれそう。
つまり ずっと いわれるってこと!?
なんさい に なっても なにか を はじめるのに おそいってことは ないって いうけど
そういう こと なのかも しれません。

けつろん。
にんげん は いくつ に なっても まだ わかい。