月別アーカイブ: 2009年10月

陽気なギャングが地球を回す

「僕が世界を閉じ込めているわけ。僕の部屋の壁が世界を囲んでいるんだよ。閉じ込められているのは、僕以外の全員で、外にいるのは僕だけってわけ」

 田中は足が悪い。右足が不自由で引き摺って歩くことしかできない。それが先天的なものなのか、子供の時に遭遇した何らかの事故が原因なのか、久遠は知らなかった。もしかしたら外出嫌いの説明のために、わざわざ自分ででっち上げただけ、という可能性もあった。「田中さんの両親は知ってるのかな?」
「父親はいない。母親だけだ」
「そうか。じゃあ、母親は知っているのかな」
「何を」
「田中さんがやってること」
「知っているだろう?一緒に暮らしているんだから」成瀬が言う。
 田中に会ったことは何度かあったが、マンションを訪れるのは初めてだった。成瀬は十回以上行っているはずだ。
 田中の母親は、保険の勧誘員をしていて日中は外に出ていることがほとんどらしい。田中自身は部屋に閉じこもって生活をしている。
「殻に閉じこもるのは良くない」と以前に成瀬が一度言ったことがあるらしいが、すると田中は、「違うんだよ」と怒ったという。「僕が世界を閉じ込めているわけ。僕の部屋の壁が世界を囲んでいるんだよ。閉じ込められているのは、僕以外の全員で、外にいるのは僕だけってわけ」
 そういう屁理屈にもならない話を偉そうに喋り、人を煙に巻いてしまうところは、響野さんにも通じるところがあるな、と久遠は思う。

伊坂幸太郎.陽気なギャングが地球を回す(祥伝社文庫)

ねこです。

スノードーム は まさに とじこめられた せかい。
いちばめん を きりとって ゆき の まう すがた を いつでも みられるのは ステキ です。
そのなかでも エッフェルとう の スノードーム は かくべつ です。
スノードーム の なか の スノードーム。まさに おうじゃ の ふうかく です。
おねいさん も うっとりさん です。

ねこ は こじんてき に みなとみらい の スノードーム が ほしいです。
ランドマークタワー や クイーンズタワー や コスモクロック や あかレンガそうこ の
たちならぶ なかでの ゆき の まう すがた は よいものです。
ヨコハマラブ な おねいさん も きっと き に いる はず!

こんど ヨコハマ に いったとき は ぜひとも ゲット したいものです。

MOMENT

今の十秒間、君は生きていた。けれど、いつからか、その十秒間、君は死に近づいたと感じるようになる。

「死ぬって」と僕は言った。「どんな感じでしょうね」
 五十嵐さんが僕を振り返り、微笑んだ。
「目をつぶってごらん」
「はい?」
「目」
 五十嵐さんは腕を伸ばし、手を横にして僕の両目を覆った。僕は目をつぶった。何かするのかとも思ったが、五十嵐さんの手は僕の目を覆ったきり動かなかった。どこかで人の歩く音が聞こえた。誰かが喋る声も聞こえた。アナウンスで麻酔科医が呼び出されていた。ストレッチャーを押す音だろうか。金属が擦れ合う音も聞こえた。やがて五十嵐さんの手が離れ、僕は目を開けた。
「どう?」と五十嵐さんは言った。
「どうって言われても」
「今の十秒間、君は生きていた。けれど、いつからか、その十秒間、君は死に近づいたと感じるようになる。そうなったら、もう誰にも死は止められない。君を搦め捕り、その世界に引きずり込むまでね」

本多孝好.MOMENT(集英社文庫)

ねこです。

いきる と いうことは つねに ちゃくじつに いっぽいっぽ シ に ちかづいて いるんだそうです。
こども の ころ シ なんて ジサツ か こうつうじこにでも あわないかぎり そうぞう つかなかった おねいさん も
さいきん は びょうき とか たいちょう とか どろどろち とか
すごく かんがえてます。
とし を とれば とるほど だれか が しぬので
30さいにして ちゅうがくじだい の おなじ がくねん ぜんいん が
そろわないってことも あるかも しれません。

ネコ の せかい は わりと アバウトなので しんでも そのまま 100まんかい いきちゃう ネコ なんてのも います。
いちいち かぞえてられるかって かんじ ですけど
ネコどうし よーく みると あたま の うえ に すうじ が くるくる と まわってたりします。
ちなみに ねこ の あたま の うえには 3 という すうじ が くるくる まわっているみたい。

このまえ おねいさん に「ぜんせのこと おぼえてないの?」って きかれました。

「いえ しらないの。たぶん ねこ は 3ひきめだと おもうから」

って こたえたら がっかり されました。
ほんとのことなのに!

エバーグリーン

私は死ぬまで歩いていける。飛べなくたって、シン君の背中を追って、どこまでだって行けるんだ。

「マジ、十年後な。十年後の今日、三月十四日、ここっ」
 ここ、とシン君が指したのは地面だ。私たちの前に後ろに、何も目印のないあぜ道が広がっている。電柱と、融けかけた雪の田んぼしか見えないこの場所は、約束に向いていないようで向いている。この道は建物みたいになくなったりしないし、何より、どこに立ったって相手を見つけられる。目印なんか要らないのだ。
 私は思わず「ほんと?」と訊き返してしまう。
「ほんとにほんと?本気にするよ。私だけここにぽつんと居て待ちぼうけとかにならない?」
 こんなに食いついていいんだろうか、と思ったけれど、シン君は「だったら、わかりやすく十時にしよう」と条件を付け足してから「ほんと」と言い切った。ぎゅっと口の端を結んで上げる。
「じゃ、十年後」
 そう言ってシン君はピースサインを突き出した。
「うん、十年後」
 ピースサインを返した私は、何故だかにいっと笑っていた。
 自転車のチェーンが鳴る音が小さく聞こえた。シン君がペダルを踏み込む。雪どけの水が染み込んでがたがたになった道を、不安定に走り出す。だんだん遠くなる。
 私は右手のチョキを下ろすと、その場に留まってシン君の背中を見ていた。
 ――シン君が振り返らなかったら、私たちは本当にここで会える。
 心の中で賭けをした。私が見ている間、シン君はついに振り返らなかった。代わりに途中から歌が聞こえてきた。
 風が吹いて、涙の跡をくすぐる。くすぐりながら、乾かしていく。
 あぜ道に沿うように、黄色いカタマリがぽつぽつと見えている。雪が融けたら顔を出す、フキノトウの花だった。
 私は死ぬまで歩いていける。飛べなくたって、シン君の背中を追って、どこまでだって行けるんだ。

豊島ミホ.エバーグリーン双葉文庫

ねこです。

20だい に はいると あっというまに とき は すぎるもので
きづけば 10ねんまえ は ちゅうがくせい でも こうこうせい でもないという ミソジてまえという じき が だれしも に くるそうです。
じだい じだい は おんがく を きく と わりと おもいだせる みたいです。
ちゅうがく こうこうじだい の ともだち と あって なんとなく はなし が つづかないときは
カラオケ に いくと よいよ。
とうじ の うた を うたっても わりと へーきだし
うたいながら あれや これや おもいだしてくるので おすすめ てき。

あのころ の ゆめ は まぼろし に かわっても
おもいで までは いろあせませんのだ。