汚れた手をそこで拭かない

長く教師を続けるコツはね、仕事が途中だろうが何だろうが、時間になったら無理やり帰っちゃうことなのよ

「あら、千葉先生、まだいたの」
 真横から声がして、ハッと振り向くと、そこにいたのは図工担当の伊東だった。
 面倒見がよく、情に厚いベテランの伊東は、産休に入った同僚のフォローを買って出て、夏休み中も毎日のように出てきている。
「ダメよ、授業がない日くらい早く帰らないと」
「あの……教頭は」「教頭?もう帰ったけど」
 その言葉に、腹の底で何かが蠢く。後悔なのか安堵なのかは自分でもわからなかった。
「何か用があった?」
「いえ……」
「長く教師を続けるコツはね、仕事が途中だろうが何だろうが、時間になったら無理やり帰っちゃうことなのよ」
 別の教員が「伊東先生は本当にきっぱり切り上げるわよねえ」と笑い交じりに重ねた。

芦沢央.汚れた手をそこで拭かない(文春文庫)

ねこです。
おねいさんの こうこうじだいに じゅぎょうを ちゃんと やらない せんせいが いました。
ちゃんとやらないというのは てきとーに じゅぎょうを しているというわけではなく
50ふんの じゅぎょうじかんのうち 20ふんしか じゅぎょうを やらないのです。
「にんげんの しゅうちゅうりょくなんて 20ふんしか もたないんだ」
と よくいっていましたが いまにしておもうと せんせいの しゅうちゅうりょくが もたないだけでは?
という きも してきます。

そんなわけで のこりの 30ふんを じこがくしゅうにあてるもの、
ほかの きょうかの しゅくだいを はじめるもの、じゅくの べんきょうを するものなど
いるわけもなく、ほとんどの せいとが ねていました。
いや だって せんせいが「のこりの じかん しずかに ねてろ」って いうんだもの。
おねいさんも まじめな せいとだったので せんせいの ことばに したがって
ぐっすり ねていました。
あのとき せんせいは なにをしていたのか まったく おもいだせません。
そして チャイムと どうじに ゆめから さめて
じかんきっかりに ひきあげていく せんせいを みおくるのでした。

たしかに あらかじめ じゅぎょうを おわらせておくと チャイムがなったら そく じゅぎょうを おわれる。
いま おもうと ながく きょうしを つづける コツを じっせんしていたのかも。
はたらきかたかいかくを ひとあしさきに とりいれていた せんけんのめい。
さすがです。

5人のジュンコ

たぶん、それを人は「情」と呼ぶのだろう。

「まあ、俺も歳だし」
 夫はことあるごとにそう言い訳するが、こうなると年齢のせいばかりじゃない。要するに不摂生が原因なのだ。せっかく素晴らしい遺伝子を持って生まれたのに。これほどの宝の持ち腐れがあるだろうか。
 結婚するときに、契約しておくんだった。必要以上に太ったら、また劣化したら、即離婚だと。あのスタイルに惚れたのに。あの顔が好きだったのに。それらがあれば、他の難には目を瞑れたのに。
 今となっては、二十四時間、目を瞑っていたい。あの姿を見ないで済むように。
 それでも、こうやって一緒に暮らしているのは、もはや愛とか性とかではない。それらを超越した、なにか別のものだ。たぶん、それを人は「情」と呼ぶのだろう。可愛い子犬だと思って拾ってきたものが、巨大でひとつも可愛くない珍犬に成長したからといって、それを理由に捨てることができないのと同じだ。

真梨幸子 5人のジュンコ(徳間文庫)

ねこです。

ながく いっしょに くらしていると「ジョー」というものが わくらしいです。
シシドジョーとか ジョーショージとか ジョーノウチサナエとか
なつかしいひとばかり おもいうかびますが あまりかんけいなさそう。
あと マイケル・ジョーダンも かんけいないっぽい。

「ジョー」がわくと かんたんに すてられなくなるみたいです。
もちものも ながくつかえば つかうほど「ジョー」が わいてしまって
なかなか すてられないです。
おきにいりで なんども きていた ようふくとか
もう きないのに ようふくいれる いるいケースの おくに しまいがち。
なんなら さんだんにつんだ いるいケースの ジョーダンの おくに しまいがち。
「ジョー」に たいこうするには「だんしゃり」と「おもいきり」
これです。
おもいきって だんしゃりすることが だいじです。
「おもいきり」って「おもい」を「きる」みたいで
まさに「ジョー」を たちきれそうな かんじがします。

ねこは おねいさんに おもいきられないように がんばりたいです。

許されようとは思いません

どれもいいにおい、そして、いいあじ

 あれは、たしか私が四歳、姉が十歳のときのことだったと思う。
 私は『マフィンおばさんのぱんや』という絵本が大好きで、仕事で忙しい母の代わりによく姉に読み聞かせてもらっていた。
 その日もリビングで自分用の字の小さな本を読んでいた姉のところに絵本を持っていくと、姉は『よかよ、こっちにこんね』と言って微笑んだ。隣にぴったりとくっついて座り、姉の開いた絵本の中を覗き込む。姉は一枚一枚ページをめくりながら、母よりはほんの少したどたどしい口調で読んでくれた。
『たなにならんだつぼのなかをのぞくと、つぼのなかみは、アノダッテのすきなものばかり。いちごジャム、くろすぐりのジャム、プラム、ほしぶどう、コーヒー・クリーム、りんごジャム、チョコレート、シナモン、アーモンド、こなざとう。どれもいいにおい、そして、いいあじ』

芦沢 央.許されようとは思いません (新潮文庫)

ねこです。

おねいさんが こどものころ こうじょうけんがくで いった
パンこうじょうは とても おおきくて おいしいにおいの する こうじょうでした。
おねいさんが とくに きにいったのは しょくパンを やいているところ。
きれいな ちょうほうけいの きつねいろの パンが
せいぜんと ならぶ すがたに かんどうしたとか しないとか。

こうじょうけんがくの かえりに クリームパンと カレーパンを もらってかえったのだけど
こどもには カレーパン ちょっと からくて
べつの がくねんが クリームパンと いちごジャムパンだったときいて
そっちがよかった!ってなりました。

ジャムと いえば おねいさんは わりと マーマレードがすきです。
いちごジャムパンはよくみかけるのに マーマレードジャムパンってみたことがないです。
いちごジャムかいわいが マーマレードのしんしゅつを はばんでいるのでは?
これは こっかいぎいんに はたらきかけたほうがいいやつ?
ジャムにも たようせいは ひつようだとおもいます。
パンかいわいに つよい こっかいぎいんさん おしえてください。