インビジブルレイン警部補姫川玲子

それが今、自分は、どうしようもなく、嬉しいんだ。

『この前の、ラウンジじゃ……なんですよね』
「ええ……別のところの方が、私は」
『どこが、いいですか』
 とてもじゃないが、そんなことを考えられる状態ではない。
「決めてください……あなたが」
 姫川はしばらく間を置いてから、六本木ミッドタウンのホテル内にあるカフェレストランを指定してきた。時間は、今から一時間後。
「分かりました……必ず、伺います」
『じゃあ……のちほど。失礼します』
 電話を切る。
 ふいに、自分の体が重いのか、軽いのか、車内が暑いのか寒いのか、そんなことも、よく分からなくなった。
 会える。もう一度、姫川玲子に。
 そう思うと、強烈な浮遊感が腰の辺りを押し上げてくる。だが、どんな顔をして会ったらいいのかと考えると、急にシートに穴が開いて、墜落していきそうになる。
 赤信号だろうか。ゆっくりとエルグランドは停止した。
「……兄貴。誰かと、会うんですか」
 ああ、会うんだ。
 なんのために会うかは、自分でもよく分からないが、とにかく、会うんだ。
 それが今、自分は、どうしようもなく、嬉しいんだ。

誉田哲也.インビジブルレイン警部補姫川玲子(光文社文庫)

ねこです。

ひとは あうと うれしくなる あいてが いるみたいです。
ねこは おねいさんに あうと うれしいですが
ほかの にんげんは ふつーです。

でも ちゅーるくれる ひとは とくべつ。
まいにちでも あいたい。
これが あうと うれしくなるって やつですか?

おねいさんも もしかして ちゅーるめあてで
ひとと あっている かのうせい?
なんか しってはいけない ひみつを しってしまったかもしれません。

こんど おねいさんからもらう ちゅーるの でどころを
かいめいするために あとを つけてみたいとおもいます。

コーヒーが冷めないうちに

でも、ほら、そういうのって、全身で出せばいいってもんじゃないでしょ?

 長くなったタバコの灰が音もなく落ちた。それに気づいた平井が、
「……はい、終わり」
 と、言って、タバコの火をもみ消した。
 流はうつむき、高竹はカップに手をかけたまま動かない。計は心配そうにじっと平井を見つめている。
 平井は、そんな三人の顔を見渡すと、ため息をつきながら、
「私さ、辛気臭いことって苦手なのよ」
 と、うんざりしたように吐き捨てた。
「平井さん……」
 と、計が何か言いかけたが、平井はそれを手でさえぎり、
「だから、そうやって暗い顔して、大丈夫ですか?とかって聞くのもなしね」
 と、念を押した。
 計は、それでもまだ何か言いたそうな顔をしていたので、平井は、
「私、これでもちゃんと悲しんでるから……でも、ほら、そういうのって、全身で出せばいいってもんじゃないでしょ?」
 と、泣く子をなだめるような口調で説明した。クールといえば、クールである。もし、仮に、計が平井の立場だったら、計は三日三晩泣きつづけるのかもしれない。高竹であれば、喪に服すという言葉通り、しばらくは故人の死を悼み、行動を慎む事だろう。しかし、平井は計でも、高竹でもない。
「私には私の悲しみ方があるから……」

川口俊和.コーヒーが冷めないうちに

ねこです。

ねこは あまり なくことはありません。
はやい くるまに のっけられても
きゅうに スピンかけられても
こわくないです。
でも おねいさんが いなくなったりしたら なくかも。
みっかみばん なきつづけるかも。
そして たびに でるかも。
おねいさんの すがたを さがして たびに でるかも。

たぶんね、さんぞうほうしも なにか かなしいことが あって
てんじくへ いこうと したんじゃないかな?
つまり ねこも にしへ すすむべきなのかも。
そして さるっぽいのとか ぶたっぽいのとか かっぱっぽいのとか
ひきつれながら てんじくへ ありがたい おきょうを いただきに いくしかない。
そして おきょうを みつけたら
「おきょうを いただきに さんじょうほうし」
と ダジャレを かまして みごとに だっしゅ。
おねいさんも あのよで うかばれます。

とりあえず じぜんじゅんびってことで てんじくの ばしょを
ググルマップで しらべておくところから。

えっ てんじくって にほんじゃないの?
ひがえりで いけるくらいの かんじで かんがえていました。
よみが あまかったです。
しかたがないので はこねくらいで かわりの おきょう さがすことにします。

倫敦スコーンの謎〈小市民〉シリーズ

わたしたちだって、おにぎりの本場はどこかって訊かれたら困るでしょう?

「話に水を差すようだったら、ごめん。ごく単純な疑問なんだけど、そもそもスコーンってロンドンのお菓子なの?」
 すると、それまでキッチンを見つめていた小佐内さんが目だけをぼくに向け、声を殺して言った。
「小鳩くん。いきなり怖いこと訊かないで。わたしはお菓子の研究家じゃないの」
「怖いことだと思わなかった。ごめん」
「スコーンは、スコットランドで生まれたみたい」
 あれ。研究家じゃないからわからないって話じゃなかったのか。
「じゃあ、スコットランドの名物なんだね」
「とも言い切れなさそう。スコーンにジャムとクロテッドクリームを添えて紅茶のお供にするクリームティーは、イングランドの西の方で誕生したんだって」
 ふむ。
「じゃあ、現代風のスコーンは西の方の名物なのか」
「でも、クリームティーを含む、午後に軽食を食べるって習慣は、そもそもイングランド中部の貴族が始めたもの」
「……」
「ところがお茶を飲む習慣それ自体は、ポルトガルから伝えられて王宮から広まっていった。つまりロンドン」
 ぼくが困惑しているのが楽しいのか、小佐内さんはちょっと悪戯っぽく小首を傾げる。
「スコーンとお茶の組み合わせは、イギリス中のあっちこっちで生まれたすてきなものを柔軟に取り入れた、オールブリテンって感じの習慣じゃないかなってこと。わたしには、どこが本場とも言いにくい。例として適切かわからないけれど、わたしたちだって、おにぎりの本場はどこかって訊かれたら困るでしょう?」

米澤穂信.倫敦スコーンの謎〈小市民〉シリーズ(創元推理文庫)

ねこです。

おにぎりの ほんばは ねこには わかりません。
そして せかいはつの おにぎりは うめだったのか しゃけだったのか。
はたまた いちぶの しりょうでは さいきょうの おにぎりとも しょうされる
ツナマヨだったのか。
きになりまくりです。

むかし おねいさんが おひるごはんに おにぎりを つくってもっていってたころ
ていばんの ぐが ありました。
しゃけフレーク、しらす、のりのつくだに(からいやつ)、たべるラーゆ。
なかでも たべるラーゆおにぎりは やばいです。
まず、あぶらが しみて もれます。
あぶらを きって ぐだけを いれたつもりでも しみもれてきます。
ラップにじゅうまき ひっす。
そして からうますぎて いっきに たべてしまい、のどに つまります。
しの よかん。
なにもかもが ギルティ。

あまりに つみなので ふういんされた おにぎりなのでは?と
かんちがいしてしまうほどです。
もしかしたら せかいはつの おにぎりは たべるラーゆだった かのうせいも
あるかもしれません。
すうせんねんの ときを こえて ふっかつした でんせつの おにぎり。

これはもう ほうのうすべき おにぎりな きがしてきました。
でも あぶらが しみて よごしてしまう かのうせいが あるので やめておきます。