誰かに言うてほしいことは、自分で言うのが一番早いです
お兄ちゃん。
石田祥.猫を処方いたします。2(PHP文芸文庫)
そう言いかけて、かろうじて喉を塞ぐ。驚愕のあまり頰がひきつった。
似ているなんてものじゃない。目の前の男性は兄の友弥に瓜二つだ。
これでは翔祐が間違うのも無理はない。輪郭、顔立ち、肌の質感や色、おまけに声までそっくりだ。
だが、違う。表情は兄のそれとは違う。友弥はこんなふうにヘラヘラ笑わないし、喋り方もなんだか年寄り臭い。ついさっき家で会ったばかりなので、余計に違いがはっきりわかる。確実に別人だ。
それでもあまりにそっくりなので気味が悪い。腰の引けた玲央奈に、医者が言う。
「あれ?どうしはりましたか。なんか頰っぺたがプクプクしてはりますけど」
「ピクピクしてるんです」と、咄嗟に言い返す。友弥と同じ顔で軽口を叩かれることに苛つく。
「あはは。そうですか。国枝さんのほうは、どうでした?誰かが、もうやめたらええって言うてくれはりましたか?」
「はい」翔祐は頷いた。「自分で言いました」
「そうですか。そらよかった。誰かに言うてほしいことは、自分で言うのが一番早いです。的確ですしね。まあ、それが言えへん時には猫の手を借りてください。猫パンチして喝入れてくれますんで。お大事に。さて」
ねこです。
そのむかし LINDBERGってバンドの きみのいちばんに…ってうたのなかで
「だいじょうぶ、だいじょうぶだよ じぶんに いいきかせながら」って かしがあって
おねいさんは なにかあるごとに きいていました。
ほんとうは だれかに いってもらえたら よいのだけど
いってくれるひとが いないときは うたを きくことで なんとかなるものです。
ちなみに おねいさんの スマホの MUSICアプリには 「うえ」という プレイリストがあって
きぶんが あげあげになる きょくを いれています。
げんきが ないとき きぶん あげたいときに このプレイリストを きくというわけです。
それでも きぶんが あがらないときは やっぱり ねこパンチです。
ねこパンチに まさるものなし。
きもち 3%じょうしょうします。
ちいさいけれど だいじなところ。
これからも おねいさんのために ねこパンチ みがいておきます。
