青春ってきっと、気まずさでできた密室なんだ
「草間さんは、卒業して寂しい?」
青崎有吾.早朝始発の殺風景(集英社文庫)
「……煤木戸さんは寂しくないの?」
「わからない。たぶん、少しほっとしてる」
彼女はアルバムを閉じた。
「息苦しさから解放されたっていうか、密室から脱出できたみたいな。そんな気分」
「高校、楽しくなかったってこと?」
「楽しいとか楽しくないっていうより、なんていうか――気まずかった。三年間ずっと気まずかった」
その表現が気に入ったように、煤木戸さんは繰り返した。
「仲がいいわけでも悪いわけでもない、顔と苗字だけ知ってるって程度の、中途半端な関係のクラスメイトがたくさんいて。そんな人たちと無理に話を合わせながら三年間過ごして。窮屈で居づらくて、気まずかった。青春ってきっと、気まずさでできた密室なんだ。狭くてどこにも逃げ場のない密室」
「…………」
確かに、高校生活の中で気まずい瞬間はたくさんあった。席替えで話したことない子の隣になったとき。隣のクラスの生徒と電車でばったり会ったとき。友達と意見が合わなくて変な空気になってしまったとき。すべてを集計したら、楽しかった時間よりもそれらの時間のほうが長いかもしれない。いまだってわたしは、この部屋の中で途切れがちな会話をしている。
「わたしとも、気まずかった?」
尋ねると、煤木戸さんは自虐っぽく微笑んだ。
ねこです。
せいしゅん って ほろにがい って きいた こと が あります。
せいしゅん って いつも なにか が たりない って のも きいた こと が あります。
そして あらたな せつ。
せいしゅん は きまずさ で できた みっしつ!
おねいさん いわく しょうがくせい の ころ と くらべて
ちゅうがくせい や こうこうせい は いろいろ き を つかう シーン が おおく
きまずさ レベル も きゅうじょうしょう。
おねいさん が いちばん きまずかった おもいで は
きんじょ の ちいさな レンタルショップ で バイト なかま の ふたり(だんじょ) を はっけん。
えーと これ は しらない ふり すべき か
あえて こえ を かけ に いく べき か。
ふたり の しかく に なるように いどう しながら いっしょうけんめい かんがえて
おねいさん は ぶなん に ぜんしゃ を えらび ました。
あっ もしかして これって きまずさ の みっしつ じゃ ないですか?
おねいさん も せいしゅん を たんのう して いた ようで ねこ も あんしん しました。
ちなみ に ねこ の せいしゅん は 1 2 3 ジャンプ です。