蹴りたい背中

人にしてほしいことばっかりなんだ。人にやってあげたいことなんか、何一つ思い浮かばないくせに。

「速いねえ。いいなあ、悔しいなあ。」
 勝負が終わった後のさわやかな笑顔。全然悔しくなさそうに悔しいと言う。こうやってお互いをおだて合いっこすれば、仲良くはなれなくても、うまいことやっていけるんだろう。でもポニーテールの部員は、当惑したような笑顔のまま、すらっと私のそばを離れた。
「おい、自分に勝った奴をあんまり誉めると、負けぐせがつくぞ。」
 先生が声を飛ばした。
「練習の時にも悔しいと思う気持ちを持つことが大切だ。じゃないと本番でも馴れ合ってしまう。練習で闘志を剥き出しにするやり方を覚えるんだ。」
 先生はくそ真面目な顔で、一生懸命に言う。日頃ぼけていて、一瞬正気に戻ったおじいちゃんを見ているような気持ちになる。
「長谷川は練習を頑張るから、これから伸びるはずだ。」
 力強く言われて、不覚にもじんときた。先生から目をそらしながら、泣きそうになる。やっぱり先生は嫌いだ。
 認めてほしい。許してほしい。櫛にからまった髪の毛を一本一本取り除くように、私の心にからみつく黒い筋を指でつまみ取ってごみ箱に捨ててほしい。
 人にしてほしいことばっかりなんだ。人にやってあげたいことなんか、何一つ思い浮かばないくせに。

綿矢りさ.蹴りたい背中(河出文庫)

ねこです。

えさ が ほしい。
あそんで ほしい。
なでて ほしい。
ねこ が ひと に してほしいこと たくさん あります。
でも ねこ には おねいさん が なにすると よろこぶ か よく わかりません。
せみ を あげても あんまり よろこばないし
ごきぶり を つかまえても よろこばない です。
こおろぎ とか すずむし なら よろこんでくれるのかな?
そう おもって ほん を よんでいたら ひと が よろこぶこと わかりました!
どうやら くり や マツタケ を げんかん に おいておくと いいみたい!
さっそく とりに いってきます!

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