バスジャック

だからワシも、『野崎のおっちゃん』に飽きるわけにゃいかねえんだよな

「野崎さんは、動物園に勤めてどれくらいになるんですか?」
「ワシかい?ワシはこの動物園ができた時から働いてるよ」
「じゃあ、もう三十年も、ずっと?」
「そうだなあ、もうそんなになるかなあ」
 野崎さんは、お湯割りのおかわりをつくってもらいながら、特段の思い入れもなさげに応える。
「三十年って、長かったですか?」
「いやあ、三十年が五十年でも変わんねえよ。なぁんもね」
「そんなもの、かなぁ」
「ああ、インドゾウの『るうしぃ』なんざ、ワシと一緒に動物園に来たけど『もうゾウも飽きちまった』なんて言い出さないしなぁ」
 しごく真面目な顔で野崎さんが言うので、思わず噴き出してしまう。
「だからワシも、『野崎のおっちゃん』に飽きるわけにゃいかねえんだよな」
「そうかぁ。うん、そうですよね。自分に飽きるわけにはいかないか。そうだなぁ」
「ユズキさんはあれかい?ユズキさんに飽きちゃったんじゃねえのかい?」

三崎亜記.バスジャック(集英社文庫)

ねこです。

ひと は とし を とると どんどん じかん が はやく かんじるそうです。
5ねん が 10ねん に なり 20ねんまえ を しる としになると じぶん の つみかさねたものに びっくり してしまいます。
じぶん が うまれる 20ねんまえなんて そうぞう も つかないくらい かこ の ことで
れきし の いちぶでしか にんしき してないのに
いまや ことし うまれた こ の 20ねんまえ を かたることが できるのです。
10ねんまえ と いま は なんとなく つながっている きがするのに 20ねんまえ と いま は
すごく かけはなれて とおい きがするのは なぜでしょうね。

そんなこと を おもいながらも じぶん に あきるわけには いかないので
20ねん たとうが 30ねん たとうが じぶん は じぶん です。
ねこ も ねこ であることに ふまん は ありません が ちょっとだけ ライオン に あこがれます。
チカすぎちゃって どうしようって こまったり カワイくって どうしようって こまったり してみたいです。

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