オーデュボンの祈り

「それでも、話は聞いてるって」

 僕たち二人が言い合う形になると、少年は興味を失ったように背を向けて、自分が立てたばかりのカカシに向かい合った。
「ゆーお」と彼は言った。それから何度か、それを繰り返した。
 彼は、優午を作りたがっているのだろう。単なる慰めで、模造品を作ろうとしているのではなくて、本当に優午に帰ってきてもらいたいのだろう。地面には、優午の優午的な成分が埋まっていて、カカシを立てればそこに染み上がってくるのではないか、と期待していたのかもしれない。
 僕と日比野はしばらく、なすすべもなく、かける言葉もなく、立っていた。
 夕日が沈む速度は、急激に速くなる。あたりが暗くなりはじめ、夜の鼻息すら聞こえてきそうだった。しばらくして日比野が、優午の名前を呼びつづける少年の肩を叩いた。
「きっと、人と話すのが面倒臭くなっちまったんだ」
 少年は振り向いた。泣いているわけでもない。強い意志を持った顔をしていた。日比野の目を正面から見上げる。
「あんまり呼ぶと、さすがの優午もうるさがるぜ」日比野はまた、少年を叩いた。「それでも、話は聞いてるって」
 少年は、じっと日比野を見つめていた。それから、ゆっくりと深くうなずいた。

伊坂幸太郎.オーデュボンの祈り(新潮文庫)

ねこです。

こどもと いうのは いつの じだいも かわいいものです。

かくいう おねいさん も こどものころ ほしがき を さんこう に、
あじ の なくなった ガム を てんぴぼし に すれば あじ が ふっかつ するかもしれない!
とばかりに きんじょ の ゆうしてっせん の トゲ に さして よくあさ を まちました。

とうぜん の ごとく あじ が もどるはずも なく、おねいさん は あじ の しない ガム を
わびしく かみしめたのでした。
そんな おねいさん だから しょうねん の きもち は いたいほど よく わかります。
おおきく なっても じゅんしん な こころ は もっていたい ものです。

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