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パーク・ライフ

私ね、この公園で妙に気になってる人が二人いるのよ。その一人があなただったの。

「あなた、いつもあそこのベンチに座ってるでしょ?」
 女が池の対岸を指差していた。枝を伸ばした黒松の下には、たしかにぼくが一人でここへ来るときにいつも座っているベンチがある。
「あなた、あのベンチに先客がいると、嫌がらせみたいに何度も何度もその人の前を通って、この前なんか、先に座ってたカップルの前で、わざとらしく携帯なんかかけてたでしょ?三分くらい大声でしゃべって、そのカップルが迷惑そうに立ち上がったときのあなたのうれしそうな顔、私、未だに忘れられないもの」
 一方的な女の話を聞きながら、その不思議な声に聞き惚れていた。声質というよりも、その声域に魅力があった。
 女は手にハンカチを握っていた。スカーフのように薄い生地には真っ赤な薔薇が描かれている。女が飲んでいるコーヒーの香りがほのかにする。
「私ね、この公園で妙に気になってる人が二人いるのよ。その一人があなただったの。こんなこというと失礼だけど、いくら見ててもなぜかしら見飽きないのよね」
「見飽きないって……、ただベンチに座ってるだけですよ」
「それはそうだけど……」
 女がじっと見つめてくるので、思わず視線を霞ヶ関の合同庁舎ビルへ逸らし、「で、もう一人は?」と空に向かって尋ねた。

吉田修一.パーク・ライフ(文春文庫)

ねこです。

じぶん では きづかないけど だれか に じっと みられてたりってこと よく あります。
おねいさん は よく かお を おぼえられるそうで
たま に かう くらい の おみせ でも
おみせ の まえ を とおっただけで てんちょうさん に あいさつ されます。

さらには しんてんオープン の みせ で ほか の おみせ から てつだい に きてた ひと に
「このまえ しぶや の おみせ に きてましたよね!?」
と かくしん を もって いわれちゃう くらい。
もしかしたら おねいさん は ほか の ひと と ちがう オーラ が でちゃってるのかも。

でも そこから はじまる ミラクル は いまのところ ないので あんまりにも ざんねん です。